今年も文学がアツい!
読書離れが叫ばれて幾久しいこの頃ですが、個性豊かで読む人の心に大きな余韻を残していく名作は毎年数多く発表され続けています。
その出版潮流のなかで、「芥川賞受賞!」「直木賞受賞!」といった紹介文を目にしたことのある方は多いのではないでしょうか?
しかし、その実態はあまり知られていないのが現状です。
「なんとなく有名な賞なのは知ってるけど、実際どんなものなの?」「受賞したらどんなことがあるの?」「芥川賞と直木賞、どっちのほうがすごいの?」
そんな疑問をお持ちのみなさんに向けて、今回の記事では、知っているようで実はあまり知られていない二大文学賞、「芥川賞」と「直木賞」についてくわしくご紹介していきます!
日本一有名な文学賞である「芥川賞」と「直木賞」、実はこの二つの文学賞は、ある一人の人物の思い付きから始まったものであったことをご存知でしょうか?
その人物とは、作家であり、文藝春秋社の初代社長でもあった菊池寛。
昭和9年2月に親友の直木三十五(作家・映画監督)の訃報を受け取った菊池寛は、その年の『文藝春秋』4月号に、
「直木を記念するために、社で直木賞金というようなものを制定し、大衆文芸の新進作家に贈ろうかと思っている。それと同時に芥川賞金というものを制定し、純文芸の新進作家に贈ろうかと思っている」
と記載し、芥川賞・直木賞の初期構想を発表しました。
ここで気になるのが、なぜ芥川賞も同時に設立されたのか?という点ですよね。
その理由としては、当時すでに服毒自殺によって亡くなっていた芥川龍之介も、ほかでもない菊池寛の親友だったということが挙げられます。
その後、審査員に川端康成、吉川英治ら文学界の重鎮をむかえ、両賞は大きな盛り上がりを見せていきます。
また、第7回の芥川賞と直木賞からは「財団法人日本文学振興会」が創設され、賞の主催を担うようになりました。
以来現在まで、両賞は同振興会により運営されつづけています。
そこには、菊池寛の、「いつか文藝春秋社がなくなるようなことがあっても、両賞が永久に続けられるように」という切実な願いが込められているのです。
今や「日本二大文学賞」と呼ばれるようになった芥川賞と直木賞は、3人の作家の友情と功績によって作り上げられたものだったんですね!
「芥川賞」と「直木賞」の主な選考基準や特徴は以下の通りです。
芥川賞 |
直木賞 |
12月から翌年5月までを上期、6月より11月までを下期として、その間に発表されたもの。 |
|
無名あるいは新人作家の書いた短編・中編。 |
無名・新進・中堅作家が書いた短編および長編の大衆文芸作品。 |
刊行されている雑誌、同人誌に掲載された作品から選考。 |
刊行されている単行本から選考。 |
正賞は懐中時計、副賞は100万円贈呈。 |
正賞は懐中時計、副賞は100万円贈呈。 |
上半期(12月1日~5月31日までに公表されたもの)は「文藝春秋」9月号に掲載。 |
上半期(12月1日~5月31日までに公表されたもの)は「オール讀物」9月号に掲載。 |
下半期(6月1日~11月30日までに公表されたもの)は翌年の「文藝春秋」3月号に掲載。 |
下半期(6月1日~11月30日までに公表されたもの)は翌年の「オール讀物」3月号に掲載。 |
結論からいって、どちらのほうがすごい、すごくないということはありません。
芥川賞と直木賞は、両賞ともすぐれた作品と作家を世に知らしめ、後世に残すという大きな役割を長年担いつづけています。
そこに純文学や大衆文学、もしくは短編、長編などのカテゴリーによる貴賤は存在しないんですね。
受賞年 |
受賞者 |
受賞作品 |
掲載誌 |
|
第170回 |
2023年 |
九段理江 |
東京都同情塔 |
新潮 |
第169回 |
2023年 |
市川沙央 |
ハンチバック |
文學界 |
第168回 |
2022年 |
井戸川射子 |
この世の喜びよ |
群像 |
第168回 |
2022年 |
佐藤厚志 |
荒地の家族 |
新潮 |
第167回 |
2022年 |
高瀬隼子 |
おいしいごはんが食べられますように |
群像 |
第166回 |
2021年 |
砂川文次 |
ブラックボックス |
群像 |
第165回 |
2021年 |
石沢麻依 |
貝に続く場所にて |
群像 |
第165回 |
2021年 |
李琴峰 |
彼岸花(ひがんばな)が咲く島 |
文學界 |
第164回 |
2020年 |
宇佐見りん |
推し、燃ゆ |
文藝 |
第163回 |
2020年 |
高山羽根子 |
首里の馬 |
新潮 |
第163回 |
2020年 |
遠野遥 |
破局 |
文藝 |
第162回 |
2019年 |
古川真人 |
背高泡立草(せいたかあわだちそう) |
すばる |
第161回 |
2019年 |
今村夏子 |
むらさきのスカートの女 |
小説トリッパー |
第160回 |
2018年 |
上田岳弘 |
ニムロッド |
群像 |
第160回 |
2018年 |
町屋良平 |
1R(いちらうんど)1分34秒 |
新潮 |
受賞年 |
受賞者 |
受賞作品 |
掲載誌/出版社 |
|
第170回 |
2023年 |
河﨑秋子 |
ともぐい |
新潮社 |
第170回 |
2023年 |
万城目学 |
八月の御所グラウンド |
文藝春秋 |
第169回 |
2023年 |
垣根涼介 |
極楽征夷大将軍 |
文藝春秋 |
第169回 |
2023年 |
永井紗耶子 |
木挽町のあだ討ち |
新潮社 |
第168回 |
2022年 |
小川哲 |
地図と拳 |
集英社 |
第168回 |
2022年 |
千早茜 |
しろがねの葉 |
新潮社 |
第167回 |
2022年 |
窪美澄 |
夜に星を放つ |
文藝春秋 |
第166回 |
2021年 |
今村翔吾 |
塞王(さいおう)の楯(たて) |
集英社 |
第166回 |
2021年 |
米澤穂信 |
黒牢城(こくろうじょう) |
KADOKAWA |
第165回 |
2021年 |
佐藤究 |
テスカトリポカ |
KADOKAWA |
第165回 |
2021年 |
澤田瞳子 |
星落ちて、なお |
文藝春秋 |
第164回 |
2020年 |
西條奈加 |
心(うら)淋し川 |
集英社 |
第163回 |
2020年 |
馳星周 |
少年と犬 |
文藝春秋 |
第162回 |
2019年 |
川越宗一 |
熱源 |
文藝春秋 |
第161回 |
2019年 |
大島真寿美 |
渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂結(たまむす)び |
文藝春秋 |
第160回 |
2018年 |
真藤順丈 |
宝島 |
講談社 |
いかがでしたか?
今回は、「芥川賞」と「直木賞」の成り立ちやその気になる違いについてくわしくご紹介しました。
受賞作品はほとんど毎年発表されますから、歴代の受賞作を順番に、もしくはお好きな受賞年から読んでいくのも楽しいかもしれませんね!
みなさんが胸打たれる作品に出会うことができるよう、陰ながら祈っています!
それでは、またお会いしましょう!
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